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全国飲食店の倒産動向から考える中小企業の生存戦略

日本の飲食業界は新規開業から数年で半数以上が閉店すると言われるほど廃業率が高く、全業種の中でも突出しています。
特に2020年以降、新型コロナウイルス禍による需要急減や物流混乱、円安による原材料費高騰、人手不足の深刻化など複合的な要因が重なり、従来順調だった企業でさえ資金繰りに苦しむケースが増加しました。
こうした環境変化に脆弱な経営基盤しか持たない中小の飲食店は大きな打撃を受けやすく、経営継続が一段と難しくなっています。

倒産件数の推移と考察

倒産件数の推移と考察

(出典元:「飲食店」の倒産動向調査(2004-2024年)帝国データバンク)

近年の飲食店倒産件数の推移を見ると、2020年に780件と過去最多水準に急増した後、国や自治体の支援策(給付金や無利子融資など)に支えられて2021~2022年は倒産が大幅に減少しました(2022年は452件)。
しかし支援策の終了やゼロゼロ融資の返済開始に伴い状況が一変し、2023年には倒産件数が再び急増しています。
2024年には894件とコロナ禍初期の2020年をも上回る過去最多を記録し、2025年も900件前後と高水準で推移して過去最多を更新しました。
倒産増加の中心は小規模な事業者で、負債額5,000万円未満の小規模倒産が全体の約8割を占める年もあります。
倒産増加の背景には、まず食材価格や光熱費・人件費の高騰によるコスト負担増大があります。
材料費やエネルギー費は近年大幅に上昇し、売価への価格転嫁が進まない飲食店では利益が圧迫されたことで、価格を値上げできないジレンマに直面していると推察されます。
さらに人手不足も深刻で、人材確保難による賃上げ負担や人件費増が経営の重荷となり、人手不足倒産は過去最多水準に達しています。
加えてコロナ禍で一時的に売上が激減した後、支援金終了後も売上が十分回復せず運転資金が枯渇するケースも多発しました。
とりわけコロナ禍で給付金の恩恵を受けた居酒屋や町中華、ラーメン店などではアフターコロナの市場変化に対応できず淘汰が進んだともSNS等で報じられています。
これら複合的な要因が重なり、飲食店の倒産件数はコロナ前を上回る厳しい水準で推移しているのです。

倒産を防ぐために経営者が留意すべき経営指標

飲食店経営者が自社の財務健全性を把握し、倒産リスクを予兆するには、いくつか重要な経営指標に注目する必要があります。
それぞれの指標が悪化した際の意味を理解し、早期に対策を講じることが肝要です。

売上高成長率

売上の増減推移は最も基本的な指標です。
売上が継続的に減少している場合、固定費負担は相対的に重くなり資金繰りが悪化しやすくなります。特にコロナ禍や景気悪化時には中小企業ほど売上の落ち込みが顕著で、金融支援が絶たれると一気に信用不安・倒産リスクが高まります。
赤字や債務超過が続く中でさらに売上が減ると、途端に資金ショートに陥りかねません。
売上高の成長鈍化や減少傾向が見られたら早急に収益改善策やコスト削減策を検討すべきでしょう。

営業利益率

本業でどれだけ利益を生み出せているかを示す売上高営業利益率も重要です。
利益率が低迷している場合、売上が伸び悩んだ際に固定費をカバーできず赤字転落するリスクが高まります。
主な原因としては、売上減少で固定費を賄えなくなっていることや経費過多が挙げられるため、自社の利益率を同業平均と比較し、低い場合は固定費の見直しや無駄な経費削減に着手する必要があります。
まずは家賃や人件費など削減余地の大きい固定費から見直し、水道光熱費や広告宣伝費など効果の薄いコストカットを進めることで、利益率改善と倒産リスク低減につながります。

キャッシュフロー

最終的に企業を倒産から救うのは現金(キャッシュ)です。
帳簿上は黒字でも手元資金が不足すれば倒産になり得るため、営業キャッシュフローの動向には特に注意が必要です。
具体的には、営業によるキャッシュフローで借入金など有利子負債の元本・利息を賄えるかを見る「営業CF対有利子負債比率」が重要なチェックポイントです。
この比率が低い、つまり事業活動による現金創出力に対して借入負担が重い場合、返済に行き詰まる危険信号と言えます。
日頃から資金繰り表を作成し、将来のキャッシュ不足を予測・早期対処する習慣をつけることで、不測の支払い難に備えることが可能です。

倒産可能性が低い会社を持続するための施策

経営指標の管理と合わせて、実務的に以下のような取り組みを行うことで経営体質の強化が期待できます。

固定費の抑制

売上が変動しても耐えられるコスト構造を築くために、家賃・人件費・減価償却費などの固定費を可能な限り圧縮します。
店舗規模や立地の見直し、業務効率化による人件費削減、クラウドキッチン活用による店舗コスト低減などが有効です。
固定費を抑えることは利益率向上に直結し、不況時にも損益分岐点を下げて倒産しにくい体質を作ります。
コロナ禍を経て大手チェーンはセントラルキッチン方式の導入等でコスト削減を進め増益を達成しており、中小企業もスケールメリットは小さいながら固定費管理の徹底で生き残りを図るべきでしょう。

顧客単価向上

限られた顧客数でも収益を確保するため、一人あたりの客単価を引き上げる戦略も重要です。
具体的には価格戦略の見直しによって適正な値上げを行い、原材料費などコスト上昇分をカバーします。
ただ闇雲な値上げは客離れを招くため、付加価値の向上が不可欠です。
例えば独自性の高いメニュー開発や高品質な食材の採用によって「値上げしても選ばれる店」を目指します。(物価高騰下でも接待需要を狙った高価格帯メニューで客単価アップに成功している事例があります)
またリピーター獲得のための顧客サービス向上やプロモーション施策を強化し、生涯顧客価値(LTV)の増大を図ることも有効でしょう。

多店舗展開戦略

経営に余力がある場合は、複数店舗展開による規模拡大も生存率向上につながり得ます。
店舗を増やすことで仕入れの一括化による原価圧縮や、人員シフトの融通、ブランド認知度向上による集客力アップなどスケールメリットを享受できます。
中小企業でも無理のない範囲で多店舗展開やフランチャイズ展開に挑戦することで、市場シェア拡大と収益安定化を図れるでしょう。
ただし拡大には資金力や人材確保が伴わないと却って経営を圧迫するリスクもあるため、自社の成長速度に見合った慎重な計画が必要です。
なお、上記の他にも新たな収益源の開拓やデジタル技術の活用は倒産リスク低減に有効です。
(例えばテイクアウト・デリバリー対応やオンライン販売による収入多角化、注文・決済のデジタル化や調理の自動化による効率向上など)
飲食店経営者は、自社の財務指標を注視しつつ、柔軟な発想で経営改善策を講じていくことで、厳しい業界環境下でも持続的な成長を実現できるでしょう。